在留資格「経営・管理」について
外国人が日本で働くためには必ず雇用されなければならないというわけではなく、外国人が日本で起業し、事業を始めることも可能です。
この場合は「経営・管理」という在留資格を取得することになります。
この在留資格は、従来は「投資・経営」と呼ばれていましたが、『入管法』の改正により、平成27年4月1日より「経営・管理」と名称が変わりました。
法改正までは、外資系企業における経営・管理活動に限られていた在留資格ですが、法改正により、日系企業における経営・管理活動が加わりました。
これにより、外国資本との結びつきの要件がなくなり、国内資本の経営・管理活動も「経営・管理」の在留資格によってできるようになりました。
役職でいえば、「社長」、「取締役」、「監査役」、「部長」、「工場長」、「支店長」等にあたり、事業の経営または管理に実質的に参画する人たちとなります。
以下は、在留資格「経営・管理」の一般的な許可基準となります。
・事業所(事務所、店舗等)を日本国内に設置すること
・2人以上の常勤の職員が従事する規模であること
・事業の経営又は管理について3年以上の経験(大学院での経営科目の専攻期間を含む)があること
・(概ね)500万円以上の投資が行われていること
・日本人が従事する場合に受ける報酬と同等以上の報酬を受けること
などが挙げられます。
上記を証明するために、会社の登記簿謄本や賃貸契約書、役員報酬を明記した議事録、定款の写し、事業計画書等を入国管理局に提出をします。
そのため、審査期間も長くなる傾向にはありますが、晴れて「経営・管理」の在留資格を取得することができたら、外国人でも日本で事業を開始することが可能となります。
一方で、「経営・管理」の在留資格を得るためには、まず事業を立ち上げ投資をすることが必要です。在留資格を得てから、事業を立ち上げるわけではありません。
そのため、万が一事業を立ち上げたものの、その後在留資格を得ることができなければ大きな損失ともなります。
「経営・管理」の在留資格を考えている方は、例えば、事業計画書や収支計画書を税理士等の専門家に見ていただくなど、万全な体制で臨むことが重要です。
外国企業の日本での拠点設立①~駐在員事務所~
よくあるご相談の一つに「外国に本社のある(親会社)企業が日本に拠点を作り、営業活動をするためにはどのような在留資格が必要ですか?」というものがあります。
一般的に、外国の企業が日本に進出してくる際には、
①駐在員事務所
②日本支店(営業所)
③日本支社(子会社、日本法人)
の3つがありますが、日本で認められる活動範囲や経営に係る裁量などが大きく異なります。
そこで、これから全3回にわけて外国企業を日本で設立する際の特徴と在留資格についてみていきたいと思います。
①駐在員事務所について
【設置目的】
・外国企業が日本で本格的な営業活動を行うための準備的、補助的行為を実施する拠点として設置
【主な活動内容】
・市場調査
・情報収集
・物品の購入
・広告宣伝 など
【できないこと】
・直接的営業活動を行うことはできません。
(※つまり、日本国内との取引先企業との契約業務や支払業務はできません)
・原則として、駐在員事務所の名義で、銀行口座を開設することはできません。
(※登記により公的に存在を証明できないため)
・原則として、不動産を賃借することはできませんので、外国企業の本社または駐在員事務所の代表者など個人が代理人として、これらの契約の当事者となります。
【設置手続き】
・登記不要(不動産の購入や賃貸借契約により一定の場所を確保して事務所を置けばOK)
・日本で営業活動をしないため、法人税の対象にならず税務署への届けも不要。
【注意点】
・例外として外国の銀行、保険会社、証券会社等の金融機関が駐在員事務所を設置するときは金融庁に事前届出が必要。
(※これらは銀行業法、証券取引法などの各業法に定められている規定です)
・海外送金の際に関して制限がないか国際業務に詳しい公認会計士への確認が必要。
◆「駐在員事務所」で働く外国人の在留資格について
海外から派遣される外国人や日本で採用される外国人については、以下のような在留資格を検討します。
・「技術・人文知識・国際業務」
・「企業内転勤」
(※ただし、直前の1年間に親会社やその支店等での勤務実績がないと企業内転勤は使えません)
また、「駐在員事務所」で代表として働く場合には、
・「経営・管理」
の在留資格を検討することになりますが、登記等により公的に存在を証明することができないため、当該代表者が500万円以上出資していることを証明する資料を添付するなどの対応が必要となります。
さらに、在留資格を取得する際のポイントとして、
・「駐在員事務所」が実在し、事務所の形態などから安定的・継続的な業務が可能であること
・登記等の必要はないが、親会社との雇用契約書等色々な書類を準備する
といったようなことが挙げられます。
補足)「居住資格」といわれる永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者の4つの在留資格については、身分又は地位に基づく資格であり、法的には日本人と同等の扱いとなるため、上記の在留資格に限られることなく就労することが可能です。
外国企業の日本での拠点設立②~日本支店(営業所)~
②日本支店(営業所)について
【設置目的】
・日本で営業活動を行うため(継続取引)
【設置手続き】
・登記必要(親会社と同じ名義)
※登記完了手続きまで、約1ヶ月必要です。
※登記の際には、親会社の宣誓供述書(affidavit)や登記簿等を添付。登録免許税9万円。日本支店代表者印の届出等も行う必要があります。
・資本金は不要です。
【注意点】
・支店は、法律上は支店固有の法人格はなく、親会社の法人格に内包される一部分として取り扱われます。したがって、意思決定や責任問題(訴訟等)はすべて親会社に帰属することになります。
・上記の理由から、支店で発生した負債は親会社が負うことになります。
・国内源泉所得のみに課税されますが、親会社の資本金が大きい場合は、日本法人に比べ、法人住民税が高くなります。
・会計は本国との合算で良いですが(その代り手間がかかるため、税理士コストも割高です)、税務申告は必要となります。
・資本金がないため、許認可が必要な業種の場合、許可を取得することができないこともあります。
【日本支店(営業所)とするメリット】
・支店の名義で銀行口座を開設可能です。
・支店の名義で不動産の賃貸も可能です。
・資本金不要、定款認証不要のため、設立登記の負担が軽くて済みます。
・会計は本国との合算になるため、仮に日本支店で欠損がでると本国親会社の節税効果があります。
※会計・税務に関しては国際会計に精通した会計士や税理士にご相談することをお勧めします。
◆「日本支店(営業所)」で働く外国人の在留資格について
海外から派遣される外国人や日本で採用される外国人については、以下のような在留資格を検討します。
・「技術・人文知識・国際業務」
・「企業内転勤」
(※ただし、直前の1年間に親会社やその支店等での勤務実績がないと企業内転勤は使えません)
また、日本支店(営業所)の代表者として働く場合の在留資格としては、
・「経営・管理」
・「技術・人文知識・国際業務」
・「企業内転勤」(要件については上記と同じ)
を検討します。
特に、日本における代表者は外国人でもかまいませんが、住所は日本になければいけませんので注意が必要です。
ただし、代表者が2人以上いる場合は、その内の1名の住所が日本にあれば問題ありません。
補足)「居住資格」といわれる永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者の4つの在留資格については、身分又は地位に基づく資格であり、法的には日本人と同等の扱いとなるため、上記の在留資格に限られることなく就労することが可能です。