在留資格(ビザ)、建設業許可の申請を主要業務とする、東京都豊島区駒込駅徒歩3分の行政書士事務所です。

建設業許可の「いろは」

建設業許可の目的について

少し法律的な話になりますが、建設業許可の「許可」とは本来どのような意味なのでしょうか。
「許可」とは、一般的には禁止されている行為を、要件を満たす者だけに解除する(許される)ことをいいます。

 

建設業は完全な受注産業です。
建設業は発注金額が多額であるため資金管理が複雑で難しく、さらに一定の技術水準や経験をもって建設工作物を完成させなければいけません。
そのため、誰もができるというわけではなく、建設業の許可行政庁が定める厳しい要件を満たしている建設業者のみに許可を与えることで、建設工事の施主(発注者)が安心して発注し、しいては建設業界の健全な育成を促進しようとしています。

 

一方で、すべての工事に建設業許可を必要とするわけではなく、下記の例については許可がなくても建設業の営業ができるように配慮されています。

 

◆建築一式工事のうち、
・工事1件の請負金額が1,500万円未満の工事(消費税を含んだ金額)
・請負代金の額にかかわらず、木造住宅で延べ面積が150㎡未満の工事
◆建築一式工事以外の建設工事は、
・1件の請負代金が500万円未満の工事(消費税を含んだ金額)
◆その他
・自主施工(自らが使用する建設工作物を自ら施工)
・不動産業者が建売住宅を自ら建築する場合(請負契約に該当しないため)
・船舶、車両など土地に定着しないものの工事

 

とはいえ、軽微な工事を請け負う場合でも、建設業許可を取得する需要は高まっています。
その主な理由として、
・金融機関から融資を受けやすくなる
(融資を受ける際の条件として建設業許可を持っていること、というのが多い)
・ゼネコンなど大手建設業者の下請けになる
・元請として公共工事に参加したい
(たとえ軽微な工事であっても公共工事に参加するためには、建設業許可を取り、経営事項審査を受け、入札参加資格申請を行う必要がある)
・自社の信用度がつく
といったようなことが挙げられます。

 

建設業許可は、種類と区分が細かく定められていますので、それぞれについて後ほど詳しく解説していきたいと思います。

 

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国土交通大臣許可と都道府県知事許可について

建設業許可は「国土交通大臣許可」と「都道府県知事許可」に分かれています。

 

2つ以上の都道府県に建設業を営む営業所がある場合は「国土交通大臣許可」となります。
例えば、東京に本社(本店)があり、横浜に支社(支店)がある場合など、それぞれの営業所で建設業を営む場合には「国土交通大臣許可」となります。

 

一つの都道府県のみに営業所がある場合は、「都道府県知事許可」となります。
例えば、東京都千代田区に本社(本店)があり、八王子市に支社(支店)がある場合など、営業所の数に関わらず、あくまでも一つの都道府県にある営業所で建設業を営む場合には、「都道府県知事許可」となります(上記の例ですと「東京都知事許可」)。

 

また、ここでいう「営業所」とは、請負契約の締結に係る実体的な行為をいう事務所をいい、最低限度の要件としては、契約締結に関する権限を委任された者がおり、かつ、営業を行うべき場所を有し、電話、机等什器備品を備えていることが必要となっています。(『東京都平成27年度建設業許可申請変更の手引き』より)

 

上記のように、国土交通大臣許可となるかまたは都道府県知事許可になるかはどの区域に営業所が存在するかによります。
そのため、大臣許可か都道府県知事許可かによって工事を施工できる金額に制限があるというわけではありません。
また、例えば東京都知事から許可を受けた建設業者は、東京都内の本支店のみで見積もりや契約などの営業活動を行うことができますが、工事現場については、営業所のない都道府県で行うことが可能です。
つまり、建設工事自体は営業所の所在地に関わりなく、他都道府県でも行うことができます。

 

さらに、業種ごとに大臣許可と都道府県知事許可を混合することはできませんが、本店の持つ許可の範囲であれば、営業所ごとに違う業種の許可を取得することが可能です。
例えば、
・土木一式は大臣許可で、建築一式は東京都知事許可・・・不可
・本店は土木一式と建築一式と内装仕上と建具、A支店は土木一式のみ、B支店は建築一式と内装仕上、C支店は建具のみ・・・可
となります。

 

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「一般建設業許可」と「特定建設業許可」について

建設業許可は「一般建設業」許可と「特定建設業」許可に区分されています。

 

「特定建設業」の制度は、下請負人の保護のために設けられているものです。
そのため、元請業者となって下請業者に発注できる金額に制限がある場合は「一般建設業許可」、制限がない場合を「特定建設業許可」としています。

 

具体的には、以下のとおりです。

 

①元請工事1件当たりの下請発注の合計金額
「一般建設業許可」…税込3,000万円未満(建築一式工事は税込4,500万円未満)または工事の全てを自分(自社)で施工
「特定建設業許可」…税込3,000万円以上(建築一式は4,500万円以上)、複数の下請業者に出す場合は、その合計額
②工事1件当たりの再下請発注の合計金額
「一般建設業許可」…制限なし
「特定建設業許可」…制限なし
③工事1件当たりの受注額(元請、下請ともに)
「一般建設業許可」…制限なし
「特定建設業許可」…制限なし
④工事の施工できる区域
「一般建設業許可」…制限なし
「特定建設業許可」…制限なし
⑤専任技術者
「一般建設業許可」…2級資格者、実務経験者も可
「特定建設業許可」…原則1級資格者
⑥財産的基礎
「一般建設業許可」…自己資本(純資産合計)が500万円以上あること、または500万円以上の資金調達能力があること、または直前5年間許可を受けて継続して営業した実績があり、かつ、現在許可を有していることのいずれかに該当すること。
「特定建設業許可」…欠損の額が資本金の20%を超えないこと、流動比率が75%以上であること、資本金が2,000万円以上あること、自己資本が4,000万円以上あることのすべての要件をみたすこと。

 

上記の違いから、「特定建設業許可」の方が元請業者として規模の大きい工事に携わることがわかります。
万が一、元請業者が倒産してしまうと、発注者も下請業者も多大なる損害を被ることになります。
そこで「特定建設業許可」という区分を設けて「一般建設業許可」よりも専任技術者や財産的基礎に加重を置いているのです。

 

なお、「一般建設業許可」と「特定建設業許可」は、同一業種について両方の許可は受けられませんが、業種ごとに「一般建設業許可」と「特定建設業許可」のいずれかが選択できます。
(例)建築一式は「特定建設業許可」、電気工事は「一般建設業許可」など

 

しかし、複数の営業所がある場合、例えば本店の建築一式は「特定建設業許可」で支店の建築一式は「一般建設業許可」ということはできませんので、注意が必要です。

 

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