一人で兼任できない役職に注意が必要です!
会社法では、一人の人がいくつもの会社を作り、すべての会社で代表取締役に就任することが可能です。
しかし、許認可によっては、専任性や常勤性、常駐性を求める役職があり、これらの要件が必要となる場合に、他の会社の役職を兼ねることができるのか、という問題が出てきます。
例えば、建設業許可では、経営業務の管理責任者(経管)と専任技術者(専技)は、営業所に「専任」で「常勤」であることが必要です。
ただし、営業所の専技が一級建築士事務所登録の管理建築士でもあり、または、宅建業の専任取引宅建士である場合には、同一の営業所内で「常勤」である限り、認められています。
しかし、宅建業法では、専任の宅建士は「当該事務所に常勤して」、「もっぱら宅建業の業務に従事することが必要」とされており、建設業許可の専技を兼務することができません。
別の例では、同一場所で2つの会社を経営し、どちらも代表取締役に就任している場合、確かに場所は同一で片方の会社では非常勤の代表取締役だとしても、代表権がどちらにもあるということは、何かあった時の代表者としての責任は免れません。
そのため、建設業許可を取得するという観点では、経管または専技になる代表取締役は、2社の代表取締役を務めることはできません。
もし、2社(A社とB社)の代表取締役を務めるのなら、B社で共同代表をたて、もう一人の代表取締役Dを常勤、A社で建設業許可を取得したいもう一人の代表取締役CがB社の非常勤代表取締役として、DからB社での非常勤証明書を発行してもらい、許可行政庁に提出することになります。
または、B社の代表取締役を別の人に交代し、Cは非常勤の平取(代表権のない取締役)になることで、A社にて建設業許可を取りに行くことが可能となります。
申請区分と許可の有効期間に注意!?
建設業許可には下記の通り、申請区分があります。
1.新規
2.許可換え新規
3.般・特新規
4.業種追加
5.更新
6.般・特新規+業種追加
7.般・特新規+更新
8.業種追加+更新
9.般・特新規+業種追加+更新
ここで、注意です!!
東京都知事許可の場合、2、7、8、9については、従前の許可の有効期間が満了する日の30日前までに行わなくてはいけません。
また、大臣許可については、7、8、9については、従前の許可の有効期間が満了する6ヵ月前までに行わなければなりませんが、この6ヵ月前までを1日でも切ってしまうと同時申請を行うことができません。
例えば、8の「更新」と「業種追加」を同時に行おうとしていた場合、申請までに6ヵ月を切ってしまった場合には、4の「業種追加」と5の「更新」に分けて申請書を作成し、提出する必要がありますので、更新の許可と業種追加の許可を同一の日にすることができなくなります。
また、8の「更新」と「業種追加」は6ヵ月前までに申請を完了する必要がありますが、5の「更新」については、従前の許可の有効期間が満了する3ヵ月前から受付開始となります。
都道府県知事許可の場合、従前の許可の有効期限が1週間前でも受付してもらえますが、同時申請を行う場合には、提出期限が厳密になりますので、注意が必要です。
主たる事務所と従たる事務所の許可業種の関係について
建設業許可においては、建設業を営む営業所のことを「本店」、「支店」という言い方ではなく、「主たる事務所」、「従たる事務所」と言います。
呼び方について、特にこだわる必要はありませんが、この「主従」の関係性は、建設業許可の許可業種を考えるときに参考になります。
建設業許可において、例えば、本店は「建築一式」、「塗装」、「内装仕上」、「建具」の許可を持っており、支店は「建築一式」だけ持っているというのは可能です。
つまり、本店と支店の許可業種の数が必ずしも一致する必要はありません。
しかし、許可の内容については、注意が必要となります。
それは、本店で持っていない許可業種を支店のみで持つことはできない、ということです。
例えば、上記の例でいうと、支店だけで「電気」の許可を取ることはできません。
ここで、本店と支店では気づきにくい、建設業法でいう「主たる事務所」と「従たる事務所」の関係性が見えてくると思います。
つまり、建設業許可でいう本店と支店は、別個のものではなく、あくまでも「主従」の関係にありますので、本店(主たる事務所)で持っていない許可業種を支店(従たる事務所)のみで取ることはできないのです。
建設業許可の要件として、経管と専技の要件を満たすことは大前提ですが、本店と支店の許可業種については、上記のような考え方がありますので、うっかり見落とさないように気を付けましょう!