在留資格(ビザ)、建設業許可の申請を主要業務とする、東京都豊島区駒込駅徒歩3分の行政書士事務所です。

決算変更届を提出するには?

そもそも決算変更届とは?

建設業許可を取得後、毎年事業年度終了後4ヶ月以内に決算変更届を提出する必要があります。
この決算報告は、正式には「決算終了に伴う変更届出書」と言いますが、一般的には決算変更届と呼ばれています。

 

決算変更届は変更届というよりも、事業報告としての意味合いが強いものになります。
そのため、すべての建設業許可を持つ会社は変更事項の有無にかかわらず、毎年決算変更届を提出しなければなりません。

 

決算変更届の提出がない場合「般・特新規申請」、「追加申請」、「更新申請」を受付してもらえません。
5年後の更新時期に慌てて何期分もの決算変更届の作成に追われている会社もありますが、更新時期が迫っている中で、過去の決算変更届をいくつも作成するのはとても大変です。
必ず、毎年提出するようにしましょう!

 

また、経営事項審査(以下、経審〈けいしん〉)を受ける建設業者にとっては、決算変更届で提出した工事経歴書の内容や完成工事高がそのまま経審の審査対象になり、自己資本や利益額など決算数値にかかる審査はすべて決算変更届の財務諸表から算出された数字が使われます。
つまり、公共工事の入札ランクに影響してくる、とても重要な変更届となっています。

 

この決算変更届では財務諸表を作成し、提出します。
しかし、会計士や税理士といった税の専門家が作成する財務諸表(決算報告書)をそのまま提出することができません。
建設業法によって定められた財務諸表の様式を使用し、勘定科目の組み替えを行う必要があります。

 

例えば、主な勘定科目の組み替えとして、
売掛金〈企業の決算書で用いる勘定科目〉→完成工事未収入金(←建設工事に係るもの)と売掛金(←建設工事以外のもの)に振り分ける
前払金〈企業の決算書で用いる勘定科目〉→未成工事支出金(←工事代金の前払い)と前渡金(兼業)(←工事代金以外)に振り分ける
といったようなものが挙げられます。

 

また、建設業法様式の財務諸表を作成する際の注意点として、
①経審を申請する場合は「消費税抜」に統一します。
(ただし、消費税免税事業者は消費税込で作成し、「免税につき消費税込」と表示します)
経審を受けなければ「消費税込」でも問題ありません。
②金額単位は「千円」となりますので、千円未満を切り捨てて表示します。
(ただし、会社法上の大会社〈資本金5億円以上または負債総額200億円以上〉は「百万円」単位で記載することができます)
③営業取引以外で発生した勘定科目(貸付金、借入金など)は、1年以内に精算(回収)可能なものは「短期」、1年以上先の場合は「長期」として、それぞれ流動資産、固定資産、流動負債、固定負債に振り分けます。
④「その他」に属する勘定科目であっても、資産科目の場合は資産合計の100分の5以上、負債科目の場合は負債・純資産合計の100分の5以上である場合、「その他」ではなく所定の勘定科目を用いて金額を明示する必要があります。

 

このように、建設業許可における決算変更届は通常の企業で用いる決算報告書とは異なります。
決算変更届は、事業年度終了後4ヶ月以内に所管する行政庁に提出することになっていますが、経審の申請を考えている建設業者は、経審の総合評定値通知書の有効期間が1年7か月であることも踏まえ、万が一の補正の時間等も含めて、早めに準備することが望まれます。

 

 

 

決算変更届に必要となる届出事項とは?

事業年度4ヶ月以内に届出を行う決算変更届に必要となる書類は以下の通りです。

 

①変更届出書
*届出者の押印が必要です。
*都道府県知事許可業者にあっては各都道府県で定める様式
*国土交通大臣許可業者にあっては建設業許可事務ガイドラインで定める別紙8様式

 

②工事経歴書(様式第2号)

 

③直前3年の各事業年度における工事施工金額(様式第3号)

 

④貸借対照表(様式第15号または第18号)
*法人の場合は様式第15号、個人の場合は様式第18号

 

⑤損益計算書(様式第16号または第19号)
*完成工事原価報告書を付けます。
*法人の場合は様式第16号、個人の場合は様式第19号

 

⑥株主資本等変動計算書(様式第17号)
*法人のみ必要です。

 

⑦注記表(様式第17号の2)
*法人のみ必要です。

 

⑧事業報告書
*任意様式です。
*特例有限責任会社を除く株式会社は必要です。
*株式会社で作成している事業報告書をそのまま添付することもできます。

 

⑨納税証明書(原本)
*都道府県知事許可業者は「事業税」です。
*国土交通大臣許可業者は「法人税」です。
*個人事業主の場合は「所得税」です。

 

 

さらに、特例有限会社を除く株式会社のうち、以下のいずれかに該当する場合には「附属明細表」を添付します。
①資本金の額が1億円超であるもの
②最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が200億円以上であるもの
*ただし、金融商品取引法(昭和23年法律第25号)第24条に規定する有価証券報告書の提出会社にあっては、有価証券報告書の写しの提出をもって附属明細表の提出に代えることができます。

 

また、以下は変更事項があった場合に添付します。
○使用人数を記載した書面(様式第4号)
○建設業法施行令第3条に規定する使用人の一覧表(様式第11号)
○国家資格者等・監理技術者一覧表(様式第11号の2)及び資格証明書
○定款

 

 

工事経歴書の記載方法と注意点について①

決算変更届に添付する書類の一つに「工事経歴書」があります。
この「工事経歴書」の内容や業種別の完成工事高は、そのまま経審の審査対象になるとても大事な書類となります。
そのため、ここでは迷いやすい工事経歴書の記載方法と注意点についてお伝えします。

 

①「工事経歴書」は法定様式(様式第2号)となっており、許可を受けた業種ごとに作成します。
例えば、10業種の許可を持っている場合は工事経歴書は10枚となります。
もし、完成工事高がない業種や経審を受けない業種があったとしても「実績なし」と記載して作成してください。添付を省略することができませんので、注意が必要です。

 

②工事経歴書は「税込・税抜」どちらでも作成することができるため、会計士や税理士が作成した財務諸表に合わせるのが一般的です。
しかし、経審を受ける場合には「税抜」で作成しなければならないため注意が必要です。

 

③「注文者」には、自社からみた直接の注文者を記載します。
もし下請として仕事を受けた場合、発注者ではなく自社に対して仕事を直接注文した元請または下請の建設業者名を記載します。
また、個人邸の場合など、氏名等により個人が特定されないよう注意が必要です。
例えば「鳥居さくら邸解体工事」の場合「T邸解体工事」のように工夫して記載します。

 

④「工事名」については、契約書または注文書どおりに記載します。
しかし「注文者」同様、氏名等により個人が特定されないよう上記のように工夫して記載します。

 

⑤「配置技術者」については、現場に配置した主任技術者または監理技術者の氏名を記載します。
原則として、営業所の専任技術者は記載できませんが、経管も専技も同一人物が兼ねているような小さな会社では記載することもあります。
また、現場専任を要する大きな工事(請負金額2,500万円以上の工事など)の技術者が同時期に複数の現場を担当していないか注意してください。

 

⑥「工期」は、複数年度にわたる長期工事を除いて、直近の事業年度内に着工した工事が記載対象となります。

 

次回は、実際に記載する工事の順序等についてお伝えします。

 

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