在留資格(ビザ)、建設業許可の申請を主要業務とする、東京都豊島区駒込駅徒歩3分の行政書士事務所です。

経営事項審査の「いろは」

経営事項審査制度とは?

公共工事(国または地方公共団体等が発注する建設工事)を発注者から直接請け負おうとする際に、建設業者が必ず受けなければいけない審査が「経営事項審査」です。
一般的には、略して「経審(けいしん)」と呼ばれています。

 

経営事項審査を受けると「経営事項審査結果通知書」と「総合評定通知書」が発行されます。
「経営事項審査結果通知書」と「総合評定通知書」のどちらかのみの発行を申請することもできますが、東京都をはじめ国や他の地方公共団体の多くが公共工事の入札参加資格審査において「総合評定通知書」に記載されている「総合評定値」を有していることが条件となっています。
そして、公共工事の発注者である官公庁は、この「総合評定値通知書」に記載される評価点(=総合評定値)に基づいて、建設業者のランク付けを行います。
このランクに基づいて、入札における公共工事の発注予定価格の範囲が決定されます。

 

それでは、経営事項審査における大まかな流れをみていきましょう。

 

◆経営事項審査の流れ
①国土交通大臣許可または都道府県知事許可の建設業許可を取得
(建設業許可を有していない業種は経審を受けることができません)
②決算変更届の提出
登録経営状況分析機関へ経営状況分析申請を行い、「経営状況分析結果通知書」を受領
③申請書類等の提出
(申請書類の一つとして「経営状況分析結果通知書」の原本を提出します)
④申請書正本等受理
(国土交通大臣許可の場合、各都道府県知事を経由して国土交通省へ送付されます)
申請書副本受理(申請者に返却されます)
⑤経営事項審査結果通知書送付(郵送)及び受領(申請者)

 

都道府県知事許可の場合、結果通知書の交付にかかる標準処理期間は、申請書受付後22日(休日含まず)となっています。
国土交通大臣許可の場合、結果通知書の交付にかかる標準処理期間は、申請書受付後約40日となっています。

 

経営事項審査を受ける際に最も注意しなければいけないことの一つとして、有効期限を切らさないように、定期的に経営事項審査を受ける必要があります。
結果通知書の有効期限は1年7か月となっていますが、結果通知書の交付を受けてから1年7か月ではなく、審査基準日となる申請日の直前の決算日から1年7か月となっています。
例えば、
平成26年12月31日(決算日=審査基準日)の場合、
平成28年7月31日(有効期限)
となり、その翌年は
平成27年12月31日(決算日=審査基準日)
平成29年7月31日(有効期限)
というように続いていきます。
そこで、前回の決算の有効期限(平成28年7月31日)と次の決算(平成27年12月31日)で結果通知書の交付を受けるまでの期間が空かないように注意します。
結果通知書の有効期限が切れてしまうと、公共工事発注者が作成する指名競争入札用名簿に名前が登載されても公共工事の請負契約が締結できません。

 

そのため、毎年の決算以降の各種手続きを確実に行うことことが重要です。

 

 

経審の評点アップを狙うには?

「公共工事に参加する自社の格付けを上げるために、経審の点数をアップさせるにはどうしたらいい?」といったご相談を受けることがあります。

 

単刀直入に言ってしまえば、「経営状況分析(評点Y)」と「経営規模等評価」の点数をあげていくしかありません。

 

「経営状況分析」については、日々の経営努力に直結する部分ですので、即効性は難しいかもしれませんが、

・借入金の総額と支払い利息を減少させる

・自己資本を増やすため、適正利益を確保して利益剰余金を積み増す

・工事原価および販管費の圧縮

・売掛債権の積極的な回収

・減価償却の実施

・仮勘定の精算(決算書に仮勘定を残さない)

といった方法が考えられます。

この「経営状況分析」=Y点は、経審の全体の評価の20%を占めています。

 

一方、「経営規模等評価」の点数をあげるとすれば、経審受審工事の

・技術職員数

・元請完成工事高

を増やすのが最も早いかと思います。

 

技術職員数については、1級資格保有者であれば、監理技術者講習を受講し修了証を持っていると加算されます。

また、2級資格の保有者であれば、上位資格である1級資格を狙った方が点数がアップします。

さらに、2級資格保有者であれば、基幹技能者講習修了者も加算の対象になります。

しかし、経審の技術職員評点のためだけの増員は経営を圧迫することにもなりますので、注意が必要です。

 

また、その他の審査項目(社会性等)について言えば、

・社会保険(雇用保険、健康保険、厚生年金)は、必ず入る

・自社の所属団体が防災協定に加入しているか確認をする

・中堅以上の会社は、会計監査制度を導入する

・経理職員は、建設業経理士1級・2級の資格取得を目指す

といったような対策も、評点アップにつながります。

 

経営事項審査は、日々の経営の結果が出る「通信簿」的な役割にもなっていますので、評点がドカンとアップする方法はありませんが、上記の点を意識していくと良いでしょう。

 
 
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建設業退職金共済制度とは?

建設業退職金共済制度は、通常「建退共<けんたいきょう>」と略されていますが、内容としては、建設業の現場で働くいわゆる日雇い労働者を対象とする退職金制度のことをいいます。

 

日雇労働者は、正社員として建設会社で働く人と違い、現場ごとに異なる雇用主の元で働くことが多いため、一つの会社に長年勤めるということにはなりません。
そのため、勤続年数に応じた退職金が支払われるということがなかったために、日雇労働者を対象とした退職金制度が整備されました。

 

建退共への加入は、各都道府県に支部がありますので、そちらで行うこととなります。

 

大まかな流れとしては、

①日雇労働者の雇い主(建設業者)は、建退共と退職金共済契約を締結し、証紙を購入します。
②日雇労働者は、労働日数に応じて雇い主から証紙をもらい、自分の台帳に貼っていきます。
③日雇労働者は、証紙が一定枚数以上に達すると、建退共に申請して退職金を受給することができます。

 

この建退共ですが、今回「経営事項審査のいろは」というカテゴリーにいれさせていただきました。

 

というのも、建退共への加入は、経営事項審査において加点対象となるからです。

 

建退共の制度自体は、日雇労働者にも退職金を支払いという素晴らしい制度となっていると思うのですが、中には日雇労働者を雇わず、自社の常時雇用の従業員だけで建設工事を請け負うことのできる会社も多数あります。
そのような会社は、当然、建退共に入る必要性がありません。

 

それを考えると、経営事項審査の加点対象として設けられている「建退共への加入履行」は指標として公平なのか?と思うところもあるのですが、何よりもまず、建退共の制度に対する認知度もほとんどありません。

 

そもそも日雇労働者の方への配慮として設けられている制度ですので、周知をしていくことはもちろんですが、経審との兼ね合いも含めて、ただ点数アップのために不必要な制度に加入すべきなのか、その他の項目で点数をアップさせることはできないのか、弊所としてはきちんとヒアリングの上、建設業者様にとってベストな形が提案できるように努めていきたいと思っております。

 

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